ミャンマーで『ブタがいた教室』を思い出す

キャリアコンサルタントが見た世界

はじめてのミャンマーでは、ヤンゴンの風景をいろいろ見ることができた。

当然土地勘がないので、今どこにいるのか正確に把握できないことが多々あった。

それも、車で案内してもらったのでなおさら…。

 

現地時間で午後3時頃だったと思う。

私は、とても賑やかなストリートにいた。

多くのお店が軒を連ねている。

 

ヤンゴン屋台

クレープのような生地に野菜を巻いて食べる。美味しそうだ。

 

案内人のチョウさんが教えてくれた。

「ここは地元の人しか来ません。」

そんな街を見たかった。

観光客が来ないエリアにいる特別な感覚が私は大好きだ。

ミャンマー人と同じ世界を歩いているかと思うとうれしくなってくる。

なんて安上がりな人間なんだ。

 

このストリートは、‟地元の人”たちが食材を買いに来るところらしい。

生活感に溢れている。

この日の午後は、時折小雨が降る予報だった。

まだ雨は落ちて来ていないが、多くのお店がパラソルやテントを張って営業している。

これらがマーケットの雰囲気をより効果的に演出していた。

 

ヤンゴン屋台

たくさんのお店があって賑やかだ。

 

ヤンゴンの街を歩いているといつも感じることがある。

それは、ミャンマーは食材が豊かだということだ。

どのお店を見ても野菜や果物が山盛りである。

日本のスーパーで見る野菜よりも新鮮に見えるから不思議だ。

 

売られているのは野菜や果物だけではない。

肉も売られている。

当然露店で。

これは壮観である。

お肉の解体ショーだ。

今の日本でお肉の解体ショーが見られることはまずない。

見られるのはマグロの解体ショーだ。

お店の人がいろいろな部位を丁寧に切り分けている。

しかし、…。

 

ヤンゴン屋台

お肉をツンツンしているマダムに伝えたい。それは旦那のお腹ではありません。

 

ここで日本人の感覚が疼く。

これは露店である。

当然衛生面が気になる。

写真のご婦人を見ていただきたい。

どうやら肉質を確かめるために、直接お肉をツンツンしている。

店 主:ハイ、マダム。今日のお肉はどうだい?

マダム:この弾力いいわね。これいただくわ。

これが日本であれば一発レッドカードだ。

 

しかし、ここはミャンマーである。

ミャンマーには、ミャンマーの衛生観念があるはずだ。

また、この土地の気候風土で培われた知恵があるだろう。

無菌室で育てられた現代の日本人がとやかく言うことではない。

頭ではそう理解しているのだが…。

 

それはさておき、この光景は大変貴重なものではないだろうか。

日本の子供たちがこの写真を見たらきっと驚くだろう。

日頃、食べ物の流通経路に関心を持つことなんてないはずだ。

食べ物がどういう経路をたどってスーパーに陳列されるのか、そんなことは大人でも日頃は考えないものだ。

スーパーのお肉パックだって、はじめはこんなに大きな塊なのだ。

子供たちの中には、これを想像できない子がいるかもしれない。

聞けば、魚に骨があることを知らない子どもが出てきている時代だ。

私たちが口にするものは、一体どこから来ているのか?

この問いに答えるためには、まずは現実を知るところから始めなければならない。

 

私はこの肉の塊を見ながら、その現実を教えようとしたあるドキュメンタリー番組を思い出した。

この番組はのちに『ブタのいた教室』として映画化されている。

書籍も出版されていて『豚のPちゃんと32人の小学生 ー命の授業900日ー』(著者:黒田恭史)というタイトルの本だ。

私はこのドキュメンタリー番組を見たことを覚えていた。

 

その当時は知らなかったが、この取り組みは世間を巻き込んだ大変な騒ぎになったそうだ。

物語はこんな感じだ。

ある小学校の担任教師が、4年生32人とクラスでブタを飼って、卒業前にみんなでブタ食べようと提案する。

子供たちは賛成しブタを飼いはじめる。

Pちゃんと名付けられたブタを、クラスのみんなは一生懸命お世話する。

みんなは、ブタに対して自然と愛情を持つようになる。

そのせいか、当初の計画であるみんなでブタを食べることに抵抗する子たちが現れる。

ペットとして下級生に引き継ぐか、食肉センターに送るのか、父兄を含め大きな議論に発展する。

最後は皆泣きながらPちゃんを食肉センターに見送るという3年間のストーリーだ。

 

私はこの番組を見て、素直にすごい教育だと感じた。

このようなことは、教育に対して情熱を持った教師にしかできないことだろう。

当時の私は、人間にとって「食べる」という行為が、一体どういうものなのか改めて考えさせられた。

 

やれやれ。

ヤンゴンの露店に吊り下げられた肉の塊を見て、ほんの一瞬Pちゃんを思い出してしまった。

あのクラスにいた子どもたちは、今どのような大人になっているのだろうか。

 

ミャンマーは、行く先々で私に問いかける。

見るもの、感じるもの、すべてが私の先生である。

私は先生から投げかけられた問いに真摯に向き合う。

次は一体、何を問いかけてくるのだろうか。

 

 

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このブログの執筆者
西ヶ谷 紀之
国家資格キャリアコンサルタント・社会保険労務士・行政書士
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