第1章

4 利益を確保したければ契約書にこの規定を入れるべし!?

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リッチー先生:背景が分かってきたようですね。では、課題の①から見ていきましょう。契約書の第3条を見てください。当日のキャンセルについては2項と3項でこのように規定しておけば大丈夫です。これによって、課題の②も解決します。

あおいさん♪:え?この規定があれば解決するんですか。

リッチー先生:そうです。そのためにクライアントには、コーチングは契約であることを理解してもらう必要があります。契約です。権利もあるけど義務もあるのです。義務についてしっかり理解してもらいましょう。

あおいさん♪:分かりました。

リッチー先生:課題の③については、契約書の第8条を見てください。不要なトラブルを回避するために、あえてこの規定を入れています。一見、コーチやカウンセラーにとっては不利な規定のように読めますが、この期間が過ぎれば第10条の規定によって、一定の利益を確保できるようになります。

あおいさん♪:キャンセルなのに利益を確保できるんですか?

リッチー先生:この契約書では条件付きでそれが可能になるようにしています。ここは消費者契約法の趣旨を取り入れ、契約当事者であるコーチとクライアントのバランスを図っています。

あおいさん♪:消費者契約法?

リッチー先生:消費者契約法は、消費者(クライアント)の立場と権利を守る法律です。私たちのビジネスは、個人事業主であっても消費者契約法が適用されると考えられます。ですから当然この法律を守らなければなりません。

あおいさん♪:そんな法律なんて意識したことないんですが。

リッチー先生:そうかもしれませんね。特に、カウンセリングやコーチングは、簡単に始められるビジネスということもあって、法律に対する意識を持つ機会が少ないかもしれません。

あおいさん♪:コーチングビジネスを行うためには、いろいろな法律が関係してくるんですね。

リッチー先生:そうなんです。消費者契約法は、消費者(クライアント)の利益を不当に害する契約条項は無効になるとしています。だからこそ、コーチを守るだけでなく、クライアントの利益にも配慮したバランスがとれた契約書が必要になります。ここでは、申込のキャンセルをする場合に何をしなければならないのか、契約書に記載されている契約内容を丁寧に説明する必要があります。しっかり説明していれば毅然とした態度でいられます。もし、クライアントがルールを守らなかった場合は、堂々と利益を確保してください。それが契約というものです。

あおいさん♪:すごいですね。契約の力って。

リッチー先生:次は、課題の④ですが、クライアントがコーチングに対して不満を持っていることはどうして分かったのですか。

あおいさん♪:セッションのときに暗に言われたことと、クライアントのブログを見たときに知ってしまったんです。

リッチー先生:分かりました。では、契約書の第5条の1項を見てください。

あおいさん♪:(ア)から(カ)まで6種類のルールがあるんですね。

リッチー先生:そうです。コーチングがどういうものなのか、ここできっちり規定しておくことが大切です。とくに重要なのは(ア)です。この規定がないとコーチングの結果に不満を持ったクライアントに対抗できなくなります。対抗というのは、法的に反論するという意味だと理解してくださいね。あおいさんの契約書にこの規定は入っていないようですね。

あおいさん♪:はい。重要な規定なんですね。

リッチー先生:これはとても重要な規定です。特定商取引法の「特定継続的役務提供」取引を思い出してください。

あおいさん♪:覚えてます。

リッチー先生:なぜ、特定継続的役務提供取引にトラブルが多いのか。それは「その目的の実現が確実ではない」からでしたよね?

あおいさん♪:はい。

リッチー先生:だから契約書に、特定商取引法の趣旨を取り入れて、そのことを記載しておくことが大切なんです。また、(エ)の規定も重要です。これがないと、クライアントが思い違いをしてしまうことがあります。そうすると、当然不満を持つことになってしまいます。

あおいさん♪:なんだか怖いですね。

リッチー先生:契約内容の不備によってクライアントに不満を持つ余地を与えていると言えます。

あおいさん♪:私が自ら不満を持たせてしまっているということですか?

リッチー先生:厳しい言い方をすると、そういうことになります。

あおいさん♪:そんなことがあるんですね。

リッチー先生:さらに、この課題の④では、第11条の規定が効果を発揮します。

あおいさん♪:第11条は9つの項目が規定されているようですが。

リッチー先生:この中で関係してくるのは、(エ)と(カ)と(キ)です。この規定があればブログや他の方法であったとしても対抗することができます。

あおいさん♪:すごく守られている感じがします。

リッチー先生:感心するのはまだ早いですよ。クライアントの不満がさらに発展したときを想定しておかなければなりません。第12条を見てください。

あおいさん♪:これは一番避けたいケースですね。

リッチー先生:これは課題の⑦とも関係してくるところです。もしコーチングの質が低下したことをクライアントがはっきり認識した場合、ちょっと面倒なことになるかもしれません。

あおいさん♪:それは本当に困ります。

リッチー先生:現実的には少ないのかもしれません。しかし、この規定がない契約書ははっきり言って意味がありません。この条文があるからこそコーチが守られるのです。特に1項のこの文言を見てください。

あおいさん♪:範囲が定められていますね。

リッチー先生:そこなんです。消費者契約法によって、コーチが「一切責任を負わない」という契約はできないことになっています。完全免責条項は認められません。だからこそ、責任を負わなければならない場合が出てきたとしても、コーチが守られるルールを定めておかなければならないんです。

あおいさん♪:頼もしいですね。

リッチー先生:私が今までコーチやカウンセラーの契約書を見てきた中で、消費者契約法や特定商取引法に配慮した契約書が少ないんですよ。

あおいさん♪:なぜでしょうか?

リッチー先生:一概には言えませんが、日本はまだまだ契約社会であるという認識が高まっていないのかもしれません。

あおいさん♪:契約社会?

リッチー先生:そうです。ちょっと面白い話があります。私はキャリアコンサルタント試験の受験資格を得るためにGCDF-Japanキャリアカウンセラー養成講座に通いましたが、その講座のプログラムの中にクライアントとの契約に関する内容はありませんでした。講師は日本人です。一方、私がNLPプロフェッショナルコーチの養成講座に通ったとき、その講座の中にはクライアントと契約するときのプログラムが入っていました。講師はアメリカ人で、契約の大切さについての講義が時間をかけて行われました。

あおいさん♪:日本とアメリカでは契約に対する認識が違うということでしょうか?

リッチー先生:私はそう理解しました。

あおいさん♪:大学で法律を学んだ人であれば分かるのかもしれませんが、普通の人は契約の大切さについて学ぶ機会がないんじゃないですか?

リッチー先生:そこが問題なんです。学校では教えてくれません。多くの人は契約の大切さを知らないまま大人になっています。就職もそうです。

あおいさん♪:就職もですか?

リッチー先生:就職も契約です。これは会社と雇用契約を結ぶということです。大事な契約であるにもかかわらず、こうしたことを学校で学ぶ機会はほとんどありません。私は社会保険労務士でもあるので特に意識してしまうことなんですが、雇用契約を結んでいるということは、労働者としての権利と義務が発生しています。

あおいさん♪:どんな権利があるのでしょうか。

リッチー先生:就業規則に書かれています。その他にも、憲法、民法、労働契約法、その他の労働関係法規にも、労働者を守る権利が規定されています。

あおいさん♪:たくさんの権利があるんですね?

リッチー先生:しかし、知らなければ権利を行使することはできません。

あおいさん♪:じゃあ私がクライアントの権利を記載した契約書を使っていない場合は…。

リッチー先生:契約の大切さを認識しているクライアントは警戒するでしょう。クライアントにとって大切なことを目に見える形で教えてくれないのですから。そんなコーチと契約したいですか?

あおいさん♪:そんなコーチって、それ私のことかもしれません。

リッチー先生:大丈夫です。この契約書は、コーチング、カウンセリング、キャリアコンサルティングをビジネスとして行うときに関係するさまざまな法律に配慮しています。だから安心してください。では本線に戻りますよ。次は、課題の⑤ですが、これは契約書の第10条を見てください。解約する場合について規定しています。ここでは返金制度についても規定しています。とくにここを見てください。この意味が分かりますか?

あおいさん♪:クライアントは、突然解約してお金を全て返してほしいと言えなくなるということですか?

リッチー先生:そのとおりです。この規定があれば、クライアントのために解約に応じながら、コーチの利益を守ることができるんです。それは2項の「なお」以降の文言を読むと分かります。

あおいさん♪:専門的な言葉が入っていますね。

リッチー先生:そこは法的なテクニックです。クライアントの立場を考えると返金制度は必要です。返金制度を規定する以上お金は返さなければなりません。しかし、返金するお金をいくらにするのかは契約内容によります。クライアントの気持ちも分かりますが、一方、コーチも突然解約されると困ることがありますよね。不意打ちはダメージを受けます。両者のバランスを考えるとこのように規定しておく必要があると思います。

あおいさん♪:コーチとクライアントの両者のバランスを考えているんですね。

リッチー先生:私たちのビジネスは相手の利益を奪うことが目的ではないですからね。次は、課題の⑥ですが、さきほど説明した第3条と第10条があれば、一定金額を確保できるようになります。

あおいさん♪:先生、とても簡単に説明していますが本当ですか?私は売上を確保したいんですけど。

リッチー先生本当です。契約書で規定していなければ、本来失ってしまう可能性のある利益を守ることができます。ここは課題の⑦にも関係しますが、利益を確保したければこの規定を入れることによって解決します。これで以前のような悩みは減っていくはずですよ。

あおいさん♪:分かりました。契約書の力を信じます。

リッチー先生:ただ、注意も必要です。いくら優れた契約書を作っても、コーチ本人の力を必要とするケースは当然あります。クライアントの数を増やすことや、リピーターを増やすことは、契約書の存在だけでは解決しません。コーチ自身の集客力が問われるところです。

あおいさん♪:そこはコーチの努力なんですね。

リッチー先生:そうです。それでも、しっかりした契約書があるからこそ、集客ができるというプラスの効果は大いに期待できます。また、契約書の規定を上手に運用することによって、リピーターを増やすことも可能です。

あおいさん♪:え?そんなことできるんですか?